2014年(平成26年)5月・初夏35号

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清水弘子さんの「めしもち」。左が砂糖醤油、右がクルミ味噌のタレ

①洗ったご飯と小麦粉を混ぜ合わせる

②平たい団子を作る

③沸騰した湯に団子を入れる

根搦(ねがら)み前水田の南西に、新しい住宅が建ち並ぶ一角がある。

「ここは昔、清水製糸と言って、女工さんが居ましてね。こちらには、8畳と6畳のお家があったんです。そこには、妹たちが住んでいましたし、私は、昭和32年に嫁に来て、それこそ自分の居場所がないくらいで。この家の前に繭の乾燥蔵がありまして、お蔵の前に庇が出てて、その中にお部屋が、6畳やっとあったくらいの部屋で、ま、寝起きだけでしたから暮らしていましたけど。そいでも、お蔵に用事がある人が何か取りに来れば、夜中だって何だって、平気で開けられたりしてました。でも、しかたがない。お嫁さんに来た人は、みんなそういう苦労をしたんじゃないでしょうか。私なんかの歳ではね。周りの風景は、うんと変わりましたね。ここずっとお家が建っているとこは、全部うちの田んぼだったんですけど。あらら、苦労話が長くなりましたけど、今日は「めしもち」でした。こういうことは、曾おばあちゃんが教えてくれましたね」

清水さんは、台所に立つと最初に、大きめの鍋に水を入れて火にかけた。次には、「昔は、古くてすえる寸前のご飯を使ったと思いますけど」と言いながら、炊飯ジャーから炊きたてのご飯を茶碗に2杯、ザルに入れて水道の水でさっと洗う。

「私は、小さい時は東京で過ごしちゃったから、ここ羽村に来て教えてもらったんですよ。でもね、よく考えたもんですね。東京では、冷やご飯が残ったりすると、夏ですと、母なんかは、浴衣の糊にしちゃってましたけど、田舎は、そういうもったいないことはしないで、ちゃんと食料にしてましたからね」

洗ったご飯の水気をよく切ってボールに入れると、小麦粉をカップ一杯半その上に振り掛け、手でよく混ぜ合わせる。「出来上がったら堅くなるので、少し柔らかいかなと思うくらいでちょうど良いですね。手にべたべた付いちゃうほどで良いと思います」。

ご飯粒の形を少し残すくらいに混ぜると、一個50グラムくらいの大きさで平たい団子を作る。「形はすごく不揃いです。そこに又、美味しさがあるかも知れません。あれ、ちょっと柔らかすぎちゃった。でも、堅いよりは柔らかい方が美味しいと思いますよ」。

鍋に入れた水が煮立ってきたら、平たい団子を滑らせるようにお湯の中に入れる。「いじるときたなくなりますから、そのまんまにして、茹で上がって浮いてくるまで待ちます。茹で上がったら取り出して、タレを付けて召し上がっていただくことになるんですが、私は、これをフライパンで焼いてみたんです。けど、香ばしくはなりますけど、ちょっと堅めになってきますよね」。

茹で上がった「めしもち」は、鍋から取り出して皿に置く。砂糖大さじ2杯と醤油小さじ2杯を、小さなボールで混ぜ合わせてタレを作る。清水さんは、砂糖醤油のタレの他に、クルミ25グラムと味噌50グラム、それに砂糖50グラムを混ぜ合わせて、ごま油と水を加えたクルミ味噌タレも作ってくれた。

「曾おばあちゃんが、まだ元気なうちに教えてもらって、何回かやったくらいですけどね。子どもが男の子ですから、遊びに来るお友だちが居ますよね。『腹減った、おっかさん』なんて言って来るから、食べさせてあげるのが今川焼きとか鯛焼き、それに「めしもち」でしたね。小麦粉にふくらし粉入れてフライパンで焼いたもの。それもやっぱり砂糖醤油を作って食べさせたり、中へお砂糖入れて甘くしたり、色んなことしましたね。何しろ、嫁にはお小遣いは貰えなかったから」

しっかりとした腰のある団子だ。名前は「めしもち」、食感は団子。元の生地には何も味を付けてないので、味は砂糖醤油とクルミ味噌のタレに左右されるが、素朴な食べ心地は誰でも好きになるだろう。最近の油っぽいスナック菓子や甘いケーキを食べ慣れている子どもたちにも、案外受け入れてもらえるかも知れない。

④茹で上がったら取り出す

⑤砂糖と醤油を混ぜる

写真・文  芥川 仁

 

自宅玄関前の垣根を背景に、清水弘子さん

⑥すり潰したクルミと味噌、砂糖を混ぜる

⑦串に刺して盛り付ける

■次号(36号)は鳥取県で取材し、2014年7月末に掲載予定です。

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