2015年(平成27年)3月・春40号

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数日前に採ったばかりのヒジキを使った髙橋富士子さんの「ヒジキの煮物」と、この朝に稲持清子さんが採った「シイタケの網焼き」

|「石部のヒジキっていうのは、今、ブランドになっちゃってるんですよ。て、いうのは、どこのを食べても、ここのが一番美味しいって言うの。その理由が、採ってきて最初に煮る時間らしいのです。だから、(煮る)時間は言いません。……秘密、ハッハッハ。松崎の八百屋さんなんかで、石部のヒジキが入荷すると、貼り紙に必ず『石部』って書いて、『ヒジキ入荷しました』って書いてある。そうすると、みんな買いに来てくれるのですって。だから、石部のヒジキがブランドだって言うの。すごいでしょう」

富士子さんが、これだけは先ず言わなくっちゃという勢いで話し始めた。ステンレスのお盆の上に、これから使う調味料とヒジキに加える材料がきちんと揃えてある。35分ほど水に戻したヒジキをひたひたの水に入れ、鍋を火に掛けた。しばらくすると、磯の香りが漂い始める。

|「表面がブクブクとひと煮立ちしてきたら、一回、煮こぼします。いくらかアクが出るからね。煮汁は全部こぼさないで少しは残しておかないと、磯の香りが無くなっちゃいますから」

煮こぼした鍋を、もう一度火に掛け、ここでニンジンの細切りと調味料を加えていく。

|「火加減は、見ながら適当に調整しますね。醤油とお酒をちょっと、それに出汁の素を少々です。磯のものには、砂糖はあまり使わないのですが、ヒジキには少し入れますね。油揚もここで入れちゃいますね。これは、ただ切っただけです。これで、味が染みるまで置きますね」

富士子さんは、左手親指の付け根に、菜箸で煮汁をちょっと垂らして口に含み、味の染み具合を確認している。

|「ちょっと薄味になってるけど、煮て置いとくと味が染みちゃうもんで、最初は薄味にね」

春の季節感と彩りに入れるキヌサヤエンドウの細切りは、一旦茹でておいて、鮮やかな緑色を活かすため、火を止める直前に加えるのが良いようだ。

|「きれいですね、青いのを入れると。はい、これで火を止めて、かき混ぜると終わりです。これ以上煮ちゃうと、色がね……。このまま冷めるまで鍋に置いとけば味が染み込むと思います。はい、終わりました。ハッハッハ……、簡単過ぎちゃって」

ヒジキに味が染みるのを待つ間、富士子さんのウォーキング仲間の稲持清子(いなもち きよこ)さん(74)が、「今朝採ったばかり」と持ってきてくれた生シイタケを網で焼いていただくことに。

海から採ってきたばかりのヒジキの煮物と今朝採ったばかりの生シイタケの網焼き。海の幸と山の幸、それこそ採ったばかりの贅沢だ。

|「私の生まれは隣の西伊豆町で、お父さんが漁師やってましたので、小アジなんか持って帰ってくると、子どもの時から親指で開きにしてましたから。ヒジキも採ってましたよ。海のものは、手間掛かりますよ。このヒジキも2回煮たから、寝たのは夜中の3時半ごろだもん。午後の3時から煮始めて、あ、それ言うと煮る時間が分かっちゃうかな。伊豆石でへっつい(竈)を作って、その上にドラム缶を半分に切ったのを載っけて。薪で12時間煮るのも大変ですよ。薪だから寝てられないわけ。ずーっとひと晩中起きてるわけ」

そんな手間の掛かったヒジキの煮物をいただく。「これ、今年のヒジキだから、磯の風味はあると思いますよ」。

思った以上に歯応えがある。磯のほのかな香りが、ふっと漂ってくる。さて、味の方はというと、まろやかというか優しいというか。穏やかな気持ちにさせてくれる素朴な味だ。小鉢に2杯も、海の幸の贅沢をいただいた。

 

①調味料と加える材料を揃える

②水に戻したヒジキをひたひたの水で煮る

③火に掛けて間もなく沸騰してくる

④沸騰したら煮汁を少し残して捨てる

⑤火加減を見ながら調味料を加える

⑥基本の具材である油揚を加える

⑦火を止める寸前に彩りのキヌサヤを加える

 

⑧火を止めて味を染み込ませ完成

⑨朝採ったばかりのシイタケを網焼きにする

 

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