2016年(平成28年)3月・春46号

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田尻小学校の閉校式を翌日に控えた土曜日の午後、閉校式の練習から帰ったばかりの誠太郎くんに自宅の炬燵で話を聞かせて貰った。

 

明日の閉校式で発表する「田尻太鼓」と「言葉」を練習しました。明日が本番です。「田尻小、大好き」みたいな、お礼の言葉を発表します。田尻小が閉校するのは、ちょっと寂しいけど、新学校に行ったら人数も増えるから、良いかなって感じ。でも、寂しい方が強いかな。田尻小の体育館は、避難所として使うみたいだけど、校舎は分かりません。

得意な勉強ですか。算数……、うーん、体育。走るのかな、学年やったら1位やけど、他の学年入れたら、1位ではない。学校の勉強以外やったら、ソフトボールかな。田尻小で作ってた「田尻オールブラックス」で、セカンドを守ってる。バッター順は8番か9番。前は右バッターだったけど、4年生になってから「左で打ってみ」って言われて左になってる。遠くへ飛ばすのはあんまり得意じゃなくて、「バントやり」って言われて、ほとんどバントでいってた。試合は、いっぱい行ったから、どっか忘れた。優勝したこともあったけど、たぶん2回。名月杯入れたら3回かな。スポーツ以外で得意なの……、分からん、うーん、分からん。

お小遣いといっても、洗濯もんを入れてきたりした時に、100円とか200円とか。人によるけど、お母さんは100円でお祖母ちゃんが200円。たまには畳んだりするけど、いつもじゃない。タンスにしまうまではしないけど。暇があって頼まれた時は手伝うけど、自分からするというのは、あまりない。洗濯もんを入れるの……、月に1回か2回かな。

お小遣いを使うのは、田尻農産でお菓子とか買いに自転車で行く時。ひとりで行くことはないけど、昨日は(兄の)勇樹(ゆうき)と自転車で行った。田尻農産以外では、自動販売機に行ってジュース買ったり。お茶は、家にお祖母ちゃんが作ったのがあるけど、何か飽きちゃう。お年玉は、銀行に預けて……、めったに出してくれへんから。出す時とか、無いと思う。

春休みの予定は、あんまりない。能勢小の新学期が始まるのは、4月何日やったっけ。冷蔵庫に何か貼ってあった。新学期の予定表みたいなの。連れて行って欲しいとこは、……。えーっ、あんまりない。能勢小の5年生になるので、どんな友だちと一緒になるのか楽しみだけど、不安の方が大きいかな。

 

|「えーっ、忘れた」「分からん」「あんまりない」。誠太郎くんの答えに度々出てきた言葉だ。のんびりしているというか和やかというか。そんなインタビューを終えようとしていた時だ。

母親の真珠美(ますみ)さん(42)から「あんた、将来なりたい仕事の話はしたの」と水を向けられ、急に活き活きと目を輝かせ「炭焼き職人になりたい」と話し始めた。

|「将来は、炭焼きの職人になりたい。その理由は、家に炭焼きの窯があったことと、今、能勢で炭を焼く職人が少なくなっているから。自然の多いところで炭を作るのが良いと思います。立派な炭を作って、有名になりたいなって思います」

誠太郎くんの表情の変化を見て、それまでは、私の土俵に誠太郎くんを引っ張り込んでいたのではないかと、大いに反省した。

祖父母と両親に慈しまれ、男3人兄弟の末っ子として、溢れる愛情に包まれて何不自由なく暮らす新小学5年生の誠太郎くん。そこに見知らぬ大人が押しかけて、興味のないことを聞き出そうとする。どれほどの緊張の時間だっただろう。取材が終わる間際、誠太郎くんは緊張の余りなのか、鼻血を出してしまった。誠太郎くんが最後に発した言葉。「緊張したけど、インタビューが終わると、楽になった気分」。ごめん、ごめん、誠太郎くん。

最後に、翌日行われた田尻小学校閉校式で、真珠美さんから誠太郎くんへ贈られた言葉を紹介します。

|「勉強は苦手だけど、スポーツは得意。ソフトボールの活躍はすごいね。苦手なことはちょっぴり頑張って、得意なことはいっぱい楽しんでください」

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