2015年(平成27年) 7月・夏42号

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素早く仕上げて材料の歯応えを残した畠山利子さんの「ナスとタマネギの味噌炒め」

軒先に沢山のタマネギが吊してあった。「うちの野菜は、穫れたばっかりの新しいタマネギがあるから、それを使って、ナスは、うちのが虫にやられちゃったから、荒川さんちからいただいてきたの」

利子さんが、3本のナスの皮を縦の縞模様に剥いて、厚さ1センチほどの半月切りにする。タマネギ1個も半分にして、みるみるうちに1センチほどの厚さに切り揃えていく。素早い包丁さばきだ。

|「やっぱり百姓家で、夕方、田んぼや畑から上がってきて、すぐご飯にしないとね。舅さんたちが待ってるから」

ナスは水に浸けてアク抜きをする。その間に、フライパンを温めてからサラダ油を入れる。「ナスが油を吸うからたっぷりですね」。ナスの水分を切って熱したフライパンに入れると、油の弾ける音が激しく響く。菜箸でナスを混ぜながら、続いてタマネギを加える。

「ここでダシの素を小さじ1杯くらい入れます。このままだと全然味がないからね。ほんとだと、ボールに調味料を混ぜ合わせて絡めればいいんですけど、いつも、砂糖を入れ、味噌を入れ、酒を入れてって、直接フライパンに入れちゃうんですけど、いいですか」

こう言いながら利子さんは菜箸でナスとタマネギを混ぜ続けながら、砂糖大さじ2杯、味噌大さじ1杯、酒大さじ1杯を次々と入れ、火を止めた。

|「火を止めてから調味料を絡めます。ナスがしんなりしてきて、タマネギも少し柔らかくなってきたくらいで。あんまり火を通すと、歯応えがなくなっちゃうから。ほとんど半生でしょう。そいで蓋をして、少し蒸らすようにするんです」

フライパンにナスを入れて、火を止めるまでに3分余り。

|「田んぼや畑から上がってきて、今日は野菜でいいやと思うと、これにしてましたね。昔は、ナスばっかり食べさせられていたからね。夏になれば、農家はナスとキュウリしかないから、キュウリは三杯酢。あとカボチャを煮たり、そんなのしかやらないから。あとは、お新香だとかトマトを切ったり、それがうちの夕飯メニューです。素朴なありきたりのもので、すいませんね」

利子さんは申し訳なさそうにしているが、熱々をさっそくご馳走になってみると、確かに歯応えが残っていて薄味だ。材料のナスとタマネギが、それぞれの存在感を示している。ほんのり甘く、味噌味というよりは材料本来の味が活かされているのだ。

|「夏野菜はクタクタには煮ないし、タマネギは生でも食べられるものだから歯応えをなくしちゃいけないからね。味噌炒めと言っても、あんまり味噌でごてごてはやらない。舅に出す時は、もう少し味噌を入れましたね。薄味だと、こんな暑い時に農家やんのに仕事になんないとか、エネルギーがないとかって言うで、何でも、もっと塩っぽかったです」

利子さんが料理をする時の手早さを見て、畝を作る、種を蒔く、収穫をする、出荷の梱包をするなど農家仕事の1つ1つに、正確さと手早さが求められていることを思い出した。これまで数え切れないほど農家の仕事ぶりを見せてもらってきたが、農家の仕事を遠くから見ている時にはのんびりとゆっくりした時間が流れているように感じていても、近くで見ると穏やかな表情とは異なり、素早く正確に動いている手元に驚かされたのは一度や二度ではない。

利子さんの「ナスとタマネギの味噌炒め」は、農家の嫁の技と知恵が蓄積された料理なのだった。

① ナスの皮を縦の縞模様に剥く

② ナスを水に浸してアク抜きをする

③ 油が熱くなったらナス炒める

④ すぐにタマネギを加えダシの素を入れる

⑤ 砂糖、味噌、酒を入れ、火を止めて絡ませる

⑥ 調味料を絡ませたら蓋をして少し蒸す

 

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