読者からのお便り
地域の未来


 座敷から出てきたひとみさんと初めて会った時、あまりに体格が良いので中学3年生のお姉さんのさやかさんと勘違いしたほどだ。静かにゆっくりと話しをするひとみさんは、活発に野外で遊ぶというより家の中で遊ぶ時の方が楽しいと言う。吉ヶ池集落で、ただひとりの小学生だ。
 今、夢中になっているのは、夏休みにお父さんに買ってもらった「ほっぺちゃん」のぬいぐるみと遊ぶこと。「うちにゲームが無いからテレビのCMを見て、かわいいと思いました。妹のような感じ」。「学校から帰ったらいつも一緒に居るけど、寝る時には私の机の上に置いて寝ます」。
 朝6時に起きて、7時20分に吉ヶ池集落の入口へ来るスクールバスに乗る。小学生8人と中学生6人が同じスクールバスだ。ひとみさんが通う若山小学校は、全校生徒が48人。5年生は男子5人と女子5人の10人。「女の子にひとり強い子がいるけど、体育の時間にドッジボールとかすると、やっぱり男の子が強いです。掃除の時間に男の子たちがさぼっていると、まじめにして欲しいと思うけど、何も言いません。クラスのみんなは、休み時間にバスケとか本を読んだりしているけど、私は、1年生と一緒に鬼ごっこをして遊ぶのが好きです」。
 一番好きな勉強は図工。「作るとか、絵を描くのが楽しい」「本を見て花の絵を描いたり、マンガを写します。すると先生が『マンガの絵じゃなくて本物の花を描きなさい』とか言ったりします」。
 放課後は、ほとんど家の中だ。夕方6時半になったら、皿洗いのお手伝いをする。「お姉ちゃんが洗う方、私が、すすぐ方をやる。皿洗いは楽しいです。でも、お手伝いをするのは、宿題が終わっている時だけ。その他は、休みの日に洗濯物たたみをします」。
 時間を忘れて夢中になるのは、月刊少女マンガ雑誌「ちゃお」を読んでいる時だ。中でも「オレ様キングダム」と「にじいろ☆プリズムガール」が好き。ひとみさんは、「にじいろ☆プリズムガール」の主人公で女優を目指す長身の小学6年生、小日向虹架(こひなた にじか)に長身の自分を重ね合わせているのかも知れない。
 「ほっぺちゃん」と一緒に居る時、ひとみさんはそんな夢を話し合っているのではと聞いてみると、「ほっぺちゃんとは、あんまり話したことないです。将来の仕事は、まだ決めてないです」と、きっぱり否定された。
 言葉少なく、ゆっくり考え考え自分のことを話すひとみさんは、思春期に入り活発化する同世代の友だちとはリズムが合わないのかも知れない。家の中で過ごす時間が楽しいと思えるのは、家族の愛情がそれだけ深いということなのだ。この幸せの時間を楽しんでほしい。