朝倉川沿いの道を歩いていると、声を上げて遊ぶ子どもたちの気配がする。珍しいことだと思って声のする方へ行くと、小学生らしき5、6人が「鬼ごっこ」のようなことをしている。聞くと、「鬼と逃走者」というゲームだと言う。
「おい、作戦考えるぞ」と、鬼の二人が相談を始めた。「ミッションを考えるぞ」「復活ミッションも考えないとな」「嘘はなし、嘘言ったらアウトやろ」。
どうもゲームの内容が理解できないので、説明してもらった。
「『警ドロ』で逃走している逃走者を全員捕まえたら、鬼と逃走者が交代するの。復活ミッションは、困った人を助けるためで、ステージ拡大ミッションは、危険を冒してハンターに近づき、困った人を助けるの」
説明を聞くと、困った人を助けるのは、鬼のように聞こえる。結局、内容は理解できないまま。ただ、追いかけっこをしているようにしか見えないが、指先だけを動かして遊ぶゲーム世代の子どもたちでも、友だちが寄り集まれば、身体を動かして遊ぶのだと知って興味が湧いた。
一緒に遊んでいた6人の中で、本村下に住んでいるのは小島滉世くんと優也くんの兄弟。二人が通う田中小学校の同級生が遊びに来て、一緒に「鬼と逃走者」をやっているのだ。「木曜日だけは5時間授業やから、田中(地区)から遊びにきて、夕方、お母さんが迎えに来てくれるまで一緒に遊ぶ」のだと、弟の優也くんが説明してくれる。
学校の勉強で、二人が揃って好きなのは体育、共通するのはサッカー。滉世くんは跳び箱も得意と兄貴ぶりを発揮する。優也くんは、体育の他には理科の実験。アルコールランプを使った熱の伝導実験が面白かったそうだ。
四角い金属板の一つの角を温めると、その熱は円を描くように全体に伝わっていくが、試験管に入った水の上の方を温めると水の上の部分だけが熱くなり、底を温めると対流が起こって全体が熱くなる実験だ。「あんなん初めて知って面白かった」と、優也くん。
給食で一番の楽しみは、滉世くんが「きな粉揚げパン」で、優也くんは「ハンバーグ」。苦手なものは、滉世くんが「トウモロコシ」で、優也くんは「海藻サラダ」。「いつも最後まで残すんやけど、先生が早よ食べなさいと言うから、我慢して食べる」と、優也くん。
優也くんの宝物は、小学3年生の時に、自分のお金で買ったサッカーボール。ほとんど蹴ったことはないのだろう。彼が大事そうに両手で抱えてきたメタリック深紅のサッカーボールは、傷一つ付いていない。「1ヶ月に1000円もらうお小遣いと、10分間100円の肩たたきで稼いだお金を貯めて買った」のだ。このほかに、お小遣いを使うのは、お母さんと一緒に行って買う「5枚入っとって150円のカード」である。デュエルモンスターズというカードゲームらしいが、カードの役割を説明してもらっても、私には理解不能だった。優也くんは、少しあきれ顔。世代間の断絶は、こうやって意識しないうちに起こっている現実を知らされた思いだった。