読者からのお便り
地域の未来

 とんど焼きの朝、大輔くんは注連飾りを持って、雪の中をお母さんと一緒にやって来た。「書き初めは」と問われて、「あ、忘れた」。急いで帰って持ってきた2枚の書き初めは、フェルトペンで書いた『元気な子』。「上手く書けた。名前が特に上手く書けたけど、他は微妙やった」と、大輔くん。
 とんど焼きに集まっていた大人たちが見守っていたので、大輔くん照れたようだ。いきなり書き初めの半紙を丸めて、とんどの火に投げ入れた。「ああっ」と大人たちが声を上げる。
 書き初めの半紙をとんどの火に入れて、その燃えた紙片が、炎に煽(あお)られて天に高く舞い上がると、字が上手になると言われている。大輔くんが、あっという間に半紙を丸めて火に入れたため、状況は絶望的と思われた。見ていた皆が「ああっ」と声を上げた訳だ。しかし、丸まった半紙は、炎の中でパッと広がり、黒くなった半紙の炭が天に舞い上がった。大人たちが「おおっ、上がった上がった」と、感嘆の声を上げる。「もう一枚は広げて入れなよ」と声を掛けられた大輔くん、広げたままパッと火に入れたのは良かったが、炎の勢いがない場所だ。案の定、半紙は燃えながら下へ落ちてしまった。
 大輔くんの通う宕陰小中学校の小学2年生は、彼が一人。小学生7人、中学生7人で、全校生徒14人だ。「生徒の数より先生の方が多いんや」。
 好きな勉強は体育。中でもサッカーの時間が好き。でも体育が得意という訳ではなさそうだ。昨年の運動会で大輔くんの赤組が負けた時、女の子に言われた。「大ちゃんが、もっと気張って走っといたらよかったんに」。持久走も好きだが、「ぼーっとしとる間に抜かされる。前向いて一人で走っとると、後(あと)から出発した5年生が、いきなり後ろにおるんや」、といった状況のようだ。
 大輔くんの宝物は、コンバインのカタログ。ヰセキに勤める隣の「おっちゃん」に頼んで、総合カタログから各型式のカタログまで全て揃えて箱に入れてある。
 「自分のコンバインが欲しいんや。JapanシリーズHJ7120の7条刈120馬力やったら、1反を6分で刈り取ることができるんや。ズームオーガは5m伸びるし、2mを0.5秒で走るんや。うちのコンバインやったら、たぶん5秒かかるわ。ナビも付いてるしテレビも見えるし、車体が持ち上がるんで。でも、大きすぎて樒原の田んぼには、たぶん入れません。お金は貯まっていません。貯金通帳は1ページしか付いていません」
 コンバインの話題になった途端、詳しい機械の型式や性能が、口から溢れるように話し続けた。
 それでは、最後の質問です。今、一番したいことは何ですか。
 「早く中学生になりたいな。給食の時、中学生にはデザートが沢山でるから。中2からは食べ放題や。台風の時の給食の牛乳は美味しいんやで。農家が急いで搾ったから、泡立っていて甘っぽかった」
 座敷のコタツで一緒に、祖父の利博さん(77)と祖母の茂子さん(73)、母親の早百合さん(44)が声を上げて笑い、大輔くんの得意げな話を嬉しそうに聞いていた。